Research
研究内容
医療薬剤学研究室では、医薬品の適正使用法の確立をテーマとして以下の研究に取り組んでいます。
- 医薬品の副作用対策に関する研究
- 薬物動態モデルを用いた医薬品の個別化投与に関する研究
- 薬物血中濃度測定法の開発と至適投与法の確立に関する研究
- 漢方薬の薬理学的エビデンスに関する研究
- 実施中の臨床研究に関する情報公開(オプトアウト)
1. 医薬品の副作用対策に関する研究
医療現場では医薬品による様々な副作用が問題となっていますが、発現機序は明らかになっておらず、有効な予防・治療法も確立されていない場合が多くあります。私たちは、これまでに抗がん薬による末梢神経障害の発現機序の解明や対応策の提案を行ってきました。基礎研究や医療ビッグデータなどを活用しながら、医療現場で問題となっている副作用の予防・治療法の確立を目指し、有効で安全性の高い薬物療法の提供に貢献していきたいと考えています。
代表論文
- Pathological Mechanisms and Preventive Strategies of Oxaliplatin-Induced Peripheral Neuropathy.
Egashira N. Front Pain Res. 2021;2:804260.
2. 薬物動態モデルを用いた医薬品の個別化投与に関する研究
ファーマコメトリクスとは、薬物動態や治療効果を数理学的なモデルで表現し、そのモデルを用いて体内の薬物濃度や治療効果を定量的に予測する手法です。ファーマコメトリクスの手法を用いることで、大人だけではなく、小児や新生児においても一人ひとりに合わせた投与量設計が可能となります。私たちは、model-informed precision dosing(MIPD)に基づいた医薬品の個別化投与法を確立し、治療向上ならびに副作用の回避に向けた研究に取り組んでいます。
代表論文
- Simplified daptomycin dosing regimen for adult patients with methicillin-resistant Staphylococcus aureus infections based on population pharmacokinetic analysis.
Yamada T et al. Drug Metab Pharmacokinet. 2022;44:100444. - Optimal Teicoplanin Dosing Regimen in Neonates and Children Developed by Leveraging Real-World Clinical Information.
Yamada T et al. Ther Drug Monit. 2022;44(3):404-413.
3. 薬物血中濃度測定法の開発と至適投与法の確立に関する研究
治療薬物モニタリング(TDM)は、有効治療域が狭い薬剤や個人差が大きな薬物を対象として、患者さんの薬物血中濃度を測定し、用量調節を行う手法です。私たちは、医療現場で必要性が高いと判断された薬物について血中濃度の分析法を開発し、治療効果や副作用と血中濃度の関連性について検討することで、医薬品の適正使用に役立てる研究に取り組んでいます。
代表論文
- Development and Full Validation of a Bioanalytical Method for Quantifying Letermovir in Human Plasma Using Ultra-Performance Liquid Chromatography Coupled with Mass Spectrometry.
Belabbas T, Yamada T et al. Chem Pharm Bull. 2021;69(7):646-651.
4. 漢方薬の薬理学的エビデンスに関する研究
漢方薬は、長い歴史の中で植物や動物などを原料とした生薬の組み合わせなどが工夫され薬となったものですが、効果や薬理作用については十分に分かっていません。また、漢方薬は複数の生薬が配合され多くの成分を含んでいることから、様々な病態に対して未だ明らかになっていない効果を有する可能性もあります。私たちは、漢方薬の効果に関する薬理学的エビデンスの構築に取り組んでいます。
代表論文
- Kamishoyosan potentiates pentobarbital-induced sleep in socially isolated, ovariectomized mice.
Egashira N et al. J Ethnopharmacol. 2021;281:114585.